「Green Connection TOKYO 2019 ~みどりでまちが変わる!東京が変わる!~」 開催しました!

1.開催概要

【目 的】東京には、東側の都心部にも、その周りに広がる住宅地や西側の丘陵地・山地にも、さまざまなみどりがあります。いま、そのみどりが地域のサスティナビリティに大きく貢献し、まちを発展させる核として注目されています。未来へ向けて、公民それぞれの主体がこれからどのような役割を果たしていくべきなのか。東京各所で進行中の事例を通して、みどりを活かした東京のまちづくりを考えます。
【日 時】1月19日(土) 13:00~17:30 *交流パーティー 18:30~21:00
【会 場】都民ホール(東京都新宿区西新宿二丁目8番1号 都議会議事堂1階)
【内 容】
1.ご挨拶
2.導入「東京都が考える緑施策のこれから」
3.基調講演「グリーンコネクション!公民連携でつなぐ新しい時代のみどり」
4.事例紹介
・都心部における質の高い緑に向けた取組み ~市民緑地制度の可能性~
・「農」でまちをプロデュース ~”こくべジ”プロジェクトの広がり~
・空き家・空き畑・空き山を活かした協働による里づくり
~八王子市「小津倶楽部」の取組み~
5.トークセッション「みどりのチカラを、地域のサステナビリティにつなげるために」
6.クロージング「NPO法人Green Connection TOKYO設立のお知らせ」
*フォーラム終了後に交流パーティーを開催(一般参加者54名、スタッフ13名、計67名)

【主 催】東京の緑を守る将来会議、(一財)セブン-イレブン記念財団、東京都 ※交流パーティを除く
【後 援】公益財団法人 都市緑化機構、公益社団法人 日本造園学会、公益社団法人 日本都市計画学会、一般社団法人 ランドスケープコンサルタンツ協会、認定特定非営利活動法人 日本都市計画家協会、一般社団法人 いきもの共生事業推進協議会、特定非営利活動法人 NPO birth ※交流パーティを除く
【協 力】特定非営利活動法人 Green Works
【参加費】無料
【参加者】269名(一般参加者228名,ゲスト12名、アドバイザー9名、スタッフ20名)
※定員200名

・開催チラシ

表面

裏面

2.開催報告

(1)ご挨拶
【登壇者】

①東京都(都市整備局都市づくり政策部長 久保田浩二氏)
②(一財)セブン-イレブン記念財団(地域活動支援事業マネージャー 小野弘人氏)
③東京の緑を守る将来会議(代表 佐藤留美)

久保田氏からは、緑確保の総合的な方針に基づく、セブン-イレブン記念財団と東京の緑を守る将来会議との連携についてお話頂いた。
小野氏からは、セブン-イレブン記念財団の助成事業についてお話頂いた。
佐藤からは、本フォーラムの開催主旨についてご紹介した。

 

(2)導入「東京都が考える緑施策のこれから」
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【登壇者】
・米田 剛行氏(東京都 都市整備局都市づくり政策部緑地景観課長)

<講演概要>
東京都のグランドデザインや、土地利用の方針についてお話いただいた。それらの緑の取り組みのほとんどは、緑確保の総合的な方針を基礎に積み重ねた施策となっている。民有地における緑の保全や創出に取り組まない限り、東京のみどりは減少し続けてしまう。民の実力と知見を活用し、広域自治体として、区市町を支援し、誘導していくこと、そして、地域が主体となって地域の価値を向上する。
最大のカギは、創出した緑、あるいは保全すべき緑をだれがそのコストを負担し、どのように維持していくか。緑の枠組みの中だけでは、なかなか解決が難しい課題。行政のみならず、まさに民の実力と知見、地域の力を結集していくことが不可欠だと考える。

(3)基調講演「グリーンコネクション!公民連携でつなぐ新しい時代のみどり」
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【登壇者】
・横張 真氏(東京大学 都市工学専攻教授)

<講演概要>
公園や都市の緑に関わる方々は、まちの中にエデンの園をつくるという考えでこれまでやってきたと思う。しかし、今求められているのは、グレーなまちの中に緑のオアシスをつくるのではなく、まち全体をどうみどりにしていくのかということ。点としての漢字の「緑」と面としてのひらがなの「みどり」をどうつなげていくのかが鍵となる。
以下の4つのテーマで、事例紹介につながる導入を提示していただいた。
・新しい公民連携による緑の保全整備
・縮退する市街地と新しい「農」
・新しい資金の流れ
・開発と保全の一体化:「緑」から「みどり」へ

(4)事例紹介
○都心部における質の高い緑に向けた取組み ~市民緑地制度の可能性~
【登壇者】
・植田 直樹氏(株式会社 三菱地所設計ランドスケープ設計室長)


<要約>
東京都心部には、実は緑が多く存在している。民間の開発によって生まれたこれらの緑地を、<市民緑地制度>によってさらに活用しようという動きが始まっている。都心部に生み出された新たな緑の事例紹介に加え、近年、企業活動で増加してきている<第三者認証>についても伝えていただいた。

<以下講演概要>
▼東京都心部のオフィス街には意外に緑が多い。東京駅周辺から赤坂にかけて、多くの民間緑地が都市の中に埋め込まれている。区部の緑率は、民間緑地が増えたことで、年増加している。
▼都心部に生み出された新たな緑の事例紹介

名称 場所 特徴
仙石山森タワー 港区 生物多様性に配慮した緑化を実現
大手町の森 千代田区 大手町タワー 都市を再生しながら自然を再生
三井住友海上 駿河台新館 ECOM駿河台 千代田区神田駿河台 都心のオフィスビルで植栽から整備
四半世紀の緑化パイオニア
京橋の丘 中央区 東京スクエアガーデン 都心のクールダウンや「風の道」の形成に寄与
おもはらの森 渋谷区 東急プラザ表参道原宿 屋上に地域の自然とのネットワークを意識した緑化を行っている
一号館広場 千代田区 丸の内パークビル 三菱一号館を復元したビルの中庭に、憩いの空間を形成
ホトリア広場 千代田区 大手町パークビル 在来種を多用した植栽を、企業CSRで活用

▼最近の企業活動で増えてきている<第三者認証>とは
都市緑化機構では、SEGES(Social and Environmental Green Evaluation System)という緑地の評価システムを持っている。いきもの共生事業推進協議会(ABINC)もABINC認証(いきもの共生事業所認証)という認証を行っている。企業が作ったみどりを、つくったままではなく、様々な尺度で、評価、認証をしてもらうためのシステムとなっている。どちらも、緑地の存在効果と利用効果に加え、コミュニケーション活動などの場として緑地を高いレベルで活用していることかどうかが、評価の対象になっている。


▼都心部において、概ね3,000㎡以上の規模を持つ公共の緑地をプロットした地図と、概ね1,000㎡以上の規模を持つ民友緑地をプロットした地図を重ねてみると、民有緑地により、緑のネットワークの強化が見られることが分かる。
▼~大手町・丸の内・有楽町地区の取り組み~
大丸有地区では、「まちづくりガイドライン」が作られているほか、緑環境デザインマニュアルの策定が行われている。「緑視率を高める」、「建物の内と外をつなぐ」、「環境教育のフィールドを提供する」など。地区全体でみどりへの取り組みを強化している。
▼市民緑地制度
都市緑地法の改正により、公園のような機能を有する民有緑地を市民緑地と認定し、固定資産税や都市計画税を減免することで支援する仕組みが生み出された。減免された金額を質の高い緑地の維持管理活用に利用することで、緑の価値そして地域の価値向上につなげていくという新しい制度の適用の在り方が都心部では議論されている。

○「農」でまちをプロデュース ~”こくべジ”プロジェクトの広がり~
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【登壇者】
・南部 良太氏(農業デザイナー)
・中村 克之氏(農業者 / JA東京むさし国分寺地区青壮年部長 / 東京農村オーナー)

<要約>
東京の真ん中に位置する国分寺市では、国分寺崖線からの湧水や玉川上水を活用し、古くから農業が営まれてきた。ここで生産された農畜産物を「こくべジ」としてブランディングし、様々な主体がプロジェクトを支えることで、大きな広がりを見せている。「こくベジ」はどんな土壌から生まれたのかお話いただいた。

<以下講演概要>

▼国分寺市は人口12万人ほど。駅前の再開発やマンションの建設により増加傾向にある。農地面積の割合は都内2位であり、農地が街の中に点在しているが、宅地化により減少しているのが現状。
▼国分寺地域通貨「ぶんじ」は2012年にスタート。カフェ文化が盛んな国分寺で、その経営者が中心となり、はじまった。農園ボランティアのお礼にも活用され、地域の農業の中で「ぶんじ」が循環している。「ぶんじ」によって、お金の関係ではなく、気持ちと気持ちで人がつながりはじめた。そんな土壌がある中で、「こくベジ」がはじまった。
▼2014年の11月くらいから国分寺市役所主導の地方創生の一環として「こくベジ」の企画が進行し、2015年春から本格がスタートして「こくベジプロジェクト」が発足した。名水百選の水が湧き出す東京国分寺市で、三百年も前の時代から土を育むことを大切にし、ていねいに育ててきた国分寺三百年野菜を「こくベジ」としている。地産地食を目指したプロジェクトでもある。
▼国分寺市役所からの委託企業の下に「こくベジ」というプロジェクトがあり、農家さんやJA、飲食店、そして商工会や観光協会も関わっている。地産地食にむけて、様々な団体や市民が一緒になって盛り上げているのがこくベジの特徴。

▼こくベジの配達業務は、こくベジの中では一番大きい役割をはたしている。農家があって、野菜があって、飲食店があるという状況で、そこをつなげるインフラがないため、自主的に配達をやろうという思いで2015年くらいから始めた。配達を通して、人とのつながりが広がり、現在はこくベジを味わえる飲食店は100店舗くらいになっている。
▼こくベジを楽しむためのマルシェをやりたいという思いから、「こくベジのじかん」というイベントをはじめた。こくベジを中心に、ゆっくりした時間を過ごそうというコンセプトで開催している。野菜の見せ方を工夫するため、建築家と共同で野菜棚を作った。円形に組んだ棚の中で、中心でワークショップを行うことも可能な仕組みになっている。イベントでは、ライブなども行い、野菜を中心にみんなで楽しむ時間をつくっている。
▼JAや商工会とコラボした「トマトフェスタ」や、日立とのコラボによる「つれてって、食べる。わたしの野菜」、市民や飲食店と共同で行った「こくベジファーム」など、様々な企画が展開され、こくベジは盛り上がってきている。

▼市役所、飲食店、商工会、観光協会、企業、市民、NPO、JA、農家といった、いろいろな人や団体が絡み、だれもがこくベジを育てるプレイヤーとなっているのがこくベジの魅力だと思う。これからも、そういう方たちと共同でいろいろなことができる土壌をつくっていきたいと思っている。

○空き家・空き畑・空き山を活かした協働による里づくり
~八王子市「小津倶楽部」の取組み~
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【登壇者】
・飯田 晶子氏(東京大学大学院工学系研究科 特任講師)
・前原 教久氏(特定非営利活動法人小津倶楽部 代表 / 小津町会 会長)
<要約>
八王子市小津町は、全域が市街化調整区域に位置する山間の町で、少子高齢化が進行し、民間バス路線も撤退するなど都市縮退の最前線にある。そんな中、地域内外の住民・企業・行政・大学が連携し、 空き家・空き畑(耕作放棄地)・空き山(荒廃樹林地)など種々の低未利用地の再生・活用を総合的かつ一体的に行いながら、協働による里づくりを成功させた。2年半の活動でここまでの成功につながったポイントはどんな点だったのか、お話していただいた。

<以下講演概要>

▼国内の人口は減少傾向にある。八王子市では、2015年から2040年の人口増減率が-11%の見込みとなっており、東京都といえども、空き空間の増加は不可避となっている。八王子市小津町は実際にすでに、市内の他の地と比べても、空き家、空き地、空き畑(耕作放棄地)、空き山(荒廃樹林地)が増えていっている。
▼ 2014年、小津町の町会長になった前原氏は、高齢化、耕作放棄地の増加という課題に直面。そんな中、八王子の良いところや課題を見つけるまち歩きワークショップを通じて、飯田氏との出会いがあり、まちづくり大学院の演習地として小津町が選ばれた。その後、演習地として、模型をつくったり、様々な提案をしてもらったりした。その後、町会の取り組みとして空き地をどうにかしようと取組みを始めた際、町会とは別の中間組織を作った方がいいという結論に達し、2016年9月に町会とは別に小津倶楽部という団体をつくり、活動を開始した。
▼ 活動拠点として、10年間使われていなかった空き家を人力で片づけてた。町内外の総勢50~60人程で時間をかけて少しずつ修繕を行った。手作りのピザ窯も制作。今では、ピザ焼きが会の活動の定番となっている。整備後は、その場所を使って何かできないか考えた。「全国都市緑化はちおうじフェア」ではピザ窯をつかったピザづくりや、巻き割の体験会を小津倶楽部として行った。「食」と「アート」に触れる期間限定「FARMART」というイベントに場所を提供した。驚いたことに、小津町の住人は220名程度だが、イベントには1000人くらいの来場者があり、町人がみな驚いていた。その他にも、様々なイベントの開催を続けている。

▼2年半の活動でここまでの成功につながったポイントは3点。まず空間については、生まれた様々なタイプの空き空間を、いかに総合的に、一体的に再生していけるかという点を、大学の演習や懇談会やワークショップで、なんども話し合いを行って進めたことで、ここまでたどり着けた。2点目は組織。中間組織としても機能する小津倶楽部を作ったこと。小津倶楽部の会員は、正会員、ボランティア会員とも町内、町外が5:4くらいの割合で構成されているのが特徴。小津倶楽部自身が空き空間で様々な活動をするだけではなく、外部利用者との窓口としても機能している。3点目はヒト、モノ、カネ。活動を続けると、重機の操作、大工仕事、電気工事など、様々なことができる人があつまった。レンガや材木など、善意によりたくさんのモノがあつまり、再活用された。それにより、新品を使った場合の半額程度で空き家の改修を行うことができた。地域や社会に貢献したいという人の思いにより、約半額でお金をそこまでかけずに、ヒト、モノが集まった。
▼課題は財源と人材。まず、財源について。小津倶楽部では、立ち上げのためのイニシャルコストには、市の補助金を活用したが、ランニングコストは自己収益で賄える見込みである。しかし、今後特に人口が減少し、空き空間が増える一方で、財政は逼迫していく自治体では、補助金ばかりには頼れない状況が生まれてくるはず。都心部での経済活動と、郊外や里山での自然資本をいかにつなげていけるかが重要。次に、人材について。様々なタイプの空き空間を、一体的に再生していくためには、おさえておくべき法律・条例が非常に多いが、熟知して使いこなせる人材は稀。小津町では、まちづくり大学院の修了生でもあった、自治体職員が奔走したことで達成したが、そういったノウハウをどうやって使えていくのかは、高いハードルとなっている。Green Connection TOKYO をプラットフォームに様々な人・組織がつながりあいノウハウが蓄積・伝搬される仕組みを期待する。

(5) トークセッション
登壇者3名の自己紹介後にトークセッションを行った。後半は、会場からの質問感想シートについてシェアした。

【登壇者】
古澤達也氏 (国土交通省 都市局 公園緑地・景観課長)
吉高まり氏 (三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社)
原口真氏 (MS&ADインターリスク総研株式会社)
<コーディネーター> 横張真氏(東京大学 都市工学専攻教授)

<自己紹介プレゼンテーション>

【古澤達也氏】
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国土交通省では、まちなかのみどりをいかに守り、育て、新しく創っていくかの観点から仕事をしている。
都市の緑政策の主な柱は3つ。
・守る:都市に残る民有地の緑地保全
・育てる:公共公益施設や民有地の緑化を推進
・創る:新たな緑の拠点(都市公園)を確保
その3つの施策を推進するための制度が色々あり、それらを統括するマスタープランが「緑の基本計画」である。
みどりが無くなるのは民有地であるため。土地所有者が自宅を建てたり、売却をしたりする際に無くなっていく。このため、みどりを残すには補償をする必要がある。公共が公園として買ったり、あるいは土地利用規制に応じた税の特例措置等で残して頂くということ。
都心では、近年の大規模開発に伴い、大手町の森、六本木ヒルズなど民間事業者の発意により大変すばらしいみどりが創出されてきている。
平成29年の都市緑地法等の改正では様々な新制度が創設されたが、その中の「市民緑地認定制度」は、公園的な利用がなされる民有地の計画を市区村町長が認定することで税・予算の恩恵が受けられる仕組み。これにより、今まで公的主体が税を投入して緑を取得・創出するしかなかったところに新たな動きが出始めている。

【吉高まり氏】
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私からは新しい資金の流れについてお話する。私自身は、ミシガン大学で環境の勉強をして、一旦金融の経歴を経て、今環境と金融を結びつけるための仕事をしている。
SDGsとは2015年に国連が採択した、すべての人が2030年までに解決しようという17の課題。先進国のすべての人が課題解決をしていこうというのが、SDGs(Sustainable Development Goals)。これが今、金融機関と強くつながっている。
ESG投資という言葉が最近非常に新聞を賑わせている。これは、投資家が単なる利益だけではなく、利益外の情報で企業の価値を中長期的に見ていこうという流れ。
このSDGsは、今年から小中の義務教育に入った。将来の人材を確保したければSDGsに対して意識していかなければならない。持続可能性に興味を持って投資をしている投資家が増えている。SDGsでビジネスを活性化させようという世界的な流れがある。

【原口真氏】
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私はMS&ADという保険会社グループの中心で産学官公民金連携を推進している。吉高氏からも話があったSDGsは、現在投資家からのプレッシャーがあって企業は大騒ぎ。自治体も今動き始めている。
地球の健康の状態をどうとらえようかという時に階層構造にしてみると、やはり1番上がビジネス。その下に社会があって、その下に地球環境があるという形になる。今ビジネスが求められているのはこれを貫くような新しいビジネスモデルをパートナーシップで考えていく事で、企業は新しい道しるべとしてSDGsを真剣にとらえている。
でもどうして良いか分からない企業が多いので、都市のみどりに関してのモデルとして、我々はABINCという第三者認証を行う団体をつくった。ABINCができて5年で69カ所の認証を行ったが、東京都心部にもいきものを呼ぶエコロジカルネットワークの飛び石となるいきもの共生のビルがいくつも出現している。いきもの共生というと金融資本主義から真逆のように思えるが、実はビジネスとして成立する、というやり方を我々は伝え、これだけの広がりが生まれている。

<クロストーク>
3人の話題提供及び事例の紹介をふまえ、横張氏がコーディネーターとなり、クロストークを行った。

【横張氏】古澤氏は、行政の立場として、お金や街づくりの流れを、制度の立場として積極的に受け止めていくためには、この先どうしていったらいいと考えているか。制度を一気に大きく変えてしまうと色んな混乱をもたらしてしまうので、新しい流れをどうやって受け止めようとされているのか伺いたい。
【古澤氏】先般の法改正では、P-PFI(都市公園内でカフェ等の公園施設を民間事業者が設置しやすくする仕組み)や、市民緑地認定制度、さらには都市内の農地の問題についても一部手当がなされているように、「みどり」が対応すべき範囲は広い。これまでは、みどりに対する経済的価値が評価されず、その確保には予算なり税制なり補償が必須であるという前提で制度は組み立てられてきた。例えば公園緑地といってまず頭に浮かぶのはまちなかの都市公園だと思うが、原則として公共が土地を取得・管理している。その原資は国民の方から頂いた税金であり、今後、少子高齢化が進み、財政がより厳しくなるという現実を考えると限界がある。P-PFIや市民緑地認定制度は民間の新たな動きに対応するための第一歩。みどり政策は都市生活者が充実した生活を送るために行われるものであり、行政も仕事のしかたをどんどん変えていく必要があると感じている。
【横張】吉高氏は、新しいお金の流れっていうのがどんどん動いている一方、日本では随分後塵を拝してしまっているという事だったが、そういう現実を見て、もっとこうあって欲しいというイメージはあるか。
【吉高】私はずっと環境事業にお金が流れるような形をつくろうとして今まで約20年やっている。今非常に早い流れで世の中が変わっていることは確か。こんなに金融機関が手のひらを返したように変わるとは思っていなかったので、まさに今がチャンスだという風には思っている。この先、SDGsは義務教育にも入ってくる。小学生がこのバッジを指して「あ、SDGsだ」と気づくが、経営者は本部長クラスも営業部長も知らない、という状況が生まれるくらい、それくらい世の中変わってきている印象がある。
【横張】従来だと、いわゆる営利活動、経済活動というのは基本的に環境にたいしてマイナスのものであって、それに対するある種ボランティアとして我々の活動の意味があるんだという位置づけだったが、今そのビジネスそのものが全く変わろうとしている。そのため、そのビジネスとの親和性がすごい高くなっているっていうのが今の流れであると思う。そこに気付かないままに旧来の図式の中で、営利活動は悪い奴、ボランティアは良いことしてるんだという意識でいると、せっかくのチャンスをみすみす逃してしまうという事になるのではと、話しを伺っていて思った。
原口氏は、町全体をまるごといきものとの共生に向けて動いているという事だが、これを更に進めていく上で、どういった制度改革が欲しいとかですね、どういったサポートがあったらいいと考えるか。
【原口】HARUMI FLAGが、まちまるごといきもの共生というABINC ADVANCEの認証第一号をとった。飛び地で今までブランクフィールドだったような所に、これだけの街をつくりますよという事業者の熱気がある。陸の孤島みたいなところに、いきものがたくさんくるような場所ができていくと思う。
ABINCの認証をとっているような民間事業者は、SDGs、ESG投資を意識してビジネスモデルを変えようとしているが、また、根拠となる情報が充実していない。ABINCの認証を受ける際、多くの事業者が参考にしているのが、東京都が出している在来種選定ガイドラインというものだが、一方で東京都の事業ではまったく使われていないという事実がある。公園とか道路とか。あれは環境局のものだから使わない、と言っている状況がある。これではダメで、SDGsはパートナーシップで、すべての壁をこわしてやっていかないとあのゴールは絶対達成できない。そういうところが、民間事業者が、本音でいっているところ。やはり、役所の中のパートナーシップがわれわれにとっては非常に重要であると思う。

<質疑応答>
佐藤(東京の緑を守る将来会議)が加わり、参加者から寄せられた質問感想シートへの回答を行った。

<寄せられた質問・感想のピックアップ>
【植田氏への質問・感想】植田様の発表の中でみどりがコミュニケーション活動などの場としての「活用効果」が求められているという事が印象的でした。公園緑地に求められるものは多く、環境、防災、レクリエーション等、ただ、1番は人々が多く集まり交流する、にぎわうという視点に改めて気づくものでした。街路樹が樹栽帯の維持管理に民の活力を入れて、より美しい空間になるような仕組みがあれば教えて下さい。
【植田氏】先程、民間での取り組みの事例を紹介した中で、モニタリングのツールを今作ってみんなで使っていこうという話をしているが、それを、官民いっしょにやっていけたら、おもしろいし、その支援を市民緑地制度の延長としてできたら、社会全体でいい動きになっていくかもしれない。

【こくベジへの質問・感想】野菜の地産地消の取り組みは、農地の存続、営農者の増加にどのようにつなげられていくと考えますか?
【中村氏】農業者としては、地産地消が進んで、かっこいいカフェとかで自分の野菜が使われていると、プライドになるし、若い方のモチベーションにもなる。そのため、後継者が自然と育っていくようなことになると思う。

【小津町の事例への質問・感想】・管理・運営において、企画、立案し実行に移して活性化につなげており、その上で収支、キャッシュフロー状況はどのような状況でしょうか。市の補助金で賄っているとのことですが、人口減少によって税収が厳しくなった場合は?
【飯田氏】イニシャルコストでどうしてもかかってしまう部分は補助金を使用したが、ランニングコストの部分は自己収益でまかなっていく。初年度も100万円を超える収益があった。イベントでのピザ焼き等の積み重ねで徐々に収益が上がっている。人件費は完全なボランティアとしての地域活動なのでかかっていない。今後のことはわからない部分もあるが、当面は黒字を保てる見通しが立っている。

【横張氏への質問・感想】点の緑から面の緑へ、とても大事な事だと考えています。しかし、実現に向けては様々な課題があると思います。(制度・企業、中間組織、資金、土地所有者、相続、働き方、市民の意識 等)実現に向けての一番のネックポイントとその解決方法について教えてください。
【横張氏】
30年ほど前に環境科学が注目を集め、全国のいろいろな大学で、環境科学についての学部ができた。その際にやったことは、いろいろな分野の専門家を集めてくること。工学系の専門家とか、農学系の専門家、理学系の専門家、場合によっては社会科学の専門家など。その専門家をあつめて一つの組織をつくって、様々な視点からの教育を行えば環境科学はできると思われたが、ほぼ失敗した。現在、環境科学と名がつく学部はほとんどなくなったと思う。なぜかというと、結局融合ができなかった。教えている本人がマルチにならないとできるわけがない。そういった視点で考えると、吉高さんは金融にいながら環境分野の活動をしているし、原口さんはもともと保険の会社だがみどりに関する活動をしている。古澤さんは行政という立場にいながらマルチな能力を持った方。これからの大学教育で、マルチな人間を教育していけるかというところに、解があると思っている。

(6) クロージング「NPO法人Green Connection TOKYO設立のお知らせ」
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【登壇者】
・佐藤留美(NPO法人 Green Connection TOKYO 代表理事)
NPO法人としてあらたにスタートを切った「Green Connection TOKYO」について発表を行った。

3.アンケートより

・上位計画としての在り方から現場で実際にプロジェクトをされている方、両方の声が分かりやすい形で聞くことができました。いずれもわかりやすいプレゼンでそれぞれの立場からの問題点や解決の姿勢が伺えて面白かったです。いずれも自分自身の業務や対する取り組みに非常に参考になりました。
・知人に誘われて来場しました。普段はまちづくりに全く関係のない仕事をしていますが、人口減少時代に非常に重要な課題だと思いました。金融の視点は新鮮でした。民の経済活動や資金と官が結び付いて、よりよいまちづくりが進むといいです。
・新しいみどりの枠組み、パラダイムを理解できました。満点です。
・事例紹介がいずれも直近の話題であり、強い関心を持つものだった。また、みどりと金融のつながりはこれまで考えたことがなかったので新鮮だった。
・時代は常に変わっているなと感じた。経済活動と緑が同じ次元の存在としてもいい時代になってきたのだと思った。
・民間・行政・都心部・郊外・里山と様々な立場・場所の取り組みを一度に聞くことができ勉強になりました。
・みどりがインフラとして必要・重要な存在であることの認識を高めることができたと考えます。経済的にも回る可能性を感じました。
・まち全体から見る緑の話、各々の緑の取組事例、経済×緑等どの話もおもしろかったです。「緑」についてはマイナスな課題が多い(どうしていいか分からない)という印象でしたが、公と民の新しい取組を紹介していただき、これからの東京の緑について前向きに考えていこうと励まされた気がします。ありがとうございました。
・行政、金融、学識者、現場の方と色々な視点から「みどり」についての見解を聞けて大変参考になりました。
・ESG投資、SDGsなど、一般的な緑や里山のシンポジウムでは出会うことのない言葉について、またこれまで異分野と言っていいほどのパネリストの方々から、ビジネス(CSRではない)おおきなお金の動き、流れについて知ることができる点。勉強になりました。