
国分寺市内のモデルエリアを舞台に、緑を資源とした実践的な土地活用の方法について学び、具体的な事業計画を立案する「みどりのリノベーション講座2018」を開催しました!
3日間の連続講座には、建設会社、自治体職員、空間デザイナー、土地所有者の方など多様な参加者14名が集まりました。最終発表にはモデルエリアの土地所有者のほかに地域住民にも参加頂きました。
土地所有者の方からは、土地活用について新たなヒントが得られたとの声が上がり、今後の事業展開につながる講座となりました。
主催:東京の緑を守る将来会議(NPO法人 Green Connection TOKYOの前身)
共催:(一財)セブン-イレブン記念財団
後援:東京都、国分寺市 ※交流会を除く
協力:㈱チームネット、NPO法人 NPO birth
■■開催概要
【開催日時】
2018年
①8/31(金)9:45~17:00 国分寺市役所 書庫棟 会議室
②9/1(土)9:45~16:30 JA東京むさし 国分寺支店 2階 ホール
③9/8(土)9:45~14:30 JA東京むさし 国分寺支店 2階 ホール
【主催】東京の緑を守る将来会
【共催】(一財)セブン-イレブン記念財団
【後援】東京都、国分寺市 ※交流会を除く
【協力】㈱チームネット、NPO法人 NPO birth
【参加者】14名
【ゲスト】
甲斐 徹郎氏 (株)チームネット 代表取締役
田村 誠邦氏 ㈱アークブレイン 代表取締役
諸藤 貴志氏 ㈱アグリメディア 代表取締役
峯岸 祐高氏 ㈱corot 代表取締役、ところ産食プロジェクト事務局長
NPO法人里山プロジェクトみなみ
■■プログラム
■1日目 : 8/31(金)9:45~17:00
主催者あいさつ
参加者自己紹介
東京の緑の現状
講座の流れとゴールの設定説明
国分寺市とモデルエリアの現状
土地所有者からのおはなし
国分寺市内でご活躍のみなさまの活動紹介
昼食兼グループワーク アイデア共有
講義①地域資源を活かすコミュニティベネフィット論とアフォーダンス論
現地視察
個人ワーク アイデアシートの作成
発表
■2日目 : 9/1(土)9:45~16:30
講義②緑や屋敷の地域資源を活かした不動産経営論
講義③事業プロセスをデザインする自己組織化論
昼食兼グループワーク グループのテーマ決め
講義④緑の活用事例
(1) 峯岸祐高氏「地域の小さなキャッシュカウの見つけ方」
(2) 諸藤貴志氏「都市農地の有効的な活用方法」
(3) 里山プロジェクトみなみ
グループワーク 事業プランの作成
中間発表&講評
■3日目 : 9/8(土)9:45~14:30
あいさつ、振返りと本日の流れ説明
グループワーク 発表準備
最終発表
交流会
■■開催報告
<1日目 : 8/31(金)9:45~17:00>
1日目はモデルエリアについて理解し、個人でアイデアをまとめ発表を行った。
●東京の緑の現状
はじめに、主催者よりあいさつと趣旨説明を行い、講座の流れとゴールである最終発表について説明した。その後、東京の緑の現状についてお話しした。東京の緑の7割が民有地であり、その民有地の緑は年々減少を続けいていることを、図表を用いてご紹介した。
●国分寺市とモデルエリアの現状
国分寺市とモデルエリアの現状について、国分寺市の方々にご説明いただいた。国分寺は東京のおへそであり、中央線沿いは賑わいの中心として商業利用が進んでいる。一方で、北部や西武には農地や屋敷林が広がる。市内には、保存樹木316本、保存樹林19か所があり、私有林も4か所ある。平成5年に比べ、生産緑地は23ha、宅地化農地は50ha減少している。市域に占める生産緑地の割合は11%と近隣市に比べて高い。
●土地所有者からのおはなし
モデルエリアをご提供いただいた中村氏に、今回の講座に対して期待していることやモデルエリアの状況についてご説明いただいた。中村氏はこの春に早期退職してご実家の農家を継いだばかり。農家とした父親が守ってきた農地を自分の代で終わらせるわけにはいかないと強い思いがあふれていた。敷地の横に新府中街道が計画されており、すぐそばには市有林がある。外部要因も含めた新しい緑活用の事例を期待したいとのエールをいただいた。
●国分寺市内でご活躍のみなさまの活動紹介
① こくベジプロジェクト国分寺市の地場野菜等の農畜産物に「こくベジ」という愛称を付けそのPRを通じて国分寺の農業の魅力を発信し、地産地消の推進を図るプロジェクト。農家さん、飲食店、関係機関、市民が連携して取り組んでいる。
② エックス山等市民協議会
エックス山(コナラ・クヌギが中心の雑木林)を武蔵野の雑木林の姿に再生し、市民の憩いの場にするために整備管理を行っている。
③認定NPO法人Ohana
障害者就労継続支援B型事業所で都と市の緑化推進事業を受託し、市内3か所の花壇管理を育苗から行っている。
●講義「地域資源を活かすコミュニティベネフィット論とアフォーダンス論」
(株)チームネット代表取締役の甲斐徹郎氏に講義いただいた。コミュニティを作ることが目的ではなく、コミュニティを利用することで個人では得られない大きな価値をうみだすことができるという考え方に基づくと、コミュニティを活かしたプランニングが生まれること。また、人の行動は環境によって左右されるため、それを利用すると、緑に大きな価値が生まれることなどをお話しいただいた。
●現地視察
国分寺産野菜「こくベジ」と使った昼食の間に、各グループでみどりを活かした土地活用プランのアイデア共有をしてもらった。その後、モデルエリアにて現地視察を行い、現地のポテンシャルを確認した。
●発表
参加者個人でみどりを活かした土地活用プランのアイデアをまとめてもらい発表してもらった。
古民家と農地を活かしたキッチンスタジオ、子供と高齢者が交わる場、シェアハウス運営など、様々なアイデアが共有された。
その後、甲斐氏や中村氏に講評を頂いた。
<2日目 : 9/1(土)9:45~16:30>
2日目からはグループに分かれた講座を行った。具体的な事業プランを練るための手法や緑を活かした事業事例を学び、グループごとに事業プランの概要をまとめた。
●講義②緑や屋敷の地域資源を活かした不動産経営論
㈱アークブレイン代表取締役の田村誠邦氏から「緑や屋敷の地域資源を活かした不動産経営論」をテーマに講義いただいた。みどりの活用を考える上で避けては通れない相続などお金に関する話に、参加者は真剣に聞き入っていた。単なるアパート経営では、今後の少子高齢化時代にマッチしないが、緑を活かすことで、その場所に付加価値をつけることができる。相続についても、具体的な事例をもとに詳しく解説いただいた。
●講義③事業プロセスをデザインする自己組織化論
(株)チームネット代表取締役の甲斐徹郎氏に講演いただいた。自分事から始まり、それを大きく育てていく事業プロセスのデザイン手法について学んだ。事業プランを立てる上で大変参考になる内容で、参加者は昼食を取りながらグループでのアイデアをシェアした。
●講義④緑の活用事例
①峯岸祐高氏「地域の小さなキャッシュカウの見つけ方」
峯岸氏は、4年間民間企業に勤め、2010年株式会社corot創業。所沢で実家の古民家を活用して宿泊施設を行うほか、レストラン、地産地消の野菜流通などの事業を展開している。2013年より“ところ産食プロジェクト”に役員として参加。現在は事務局長として農家40軒、飲食店80軒、協力業者20軒で地産地消のネットワークづくりに取り組んでいる。小さなキャッシュカウ(金のなる木)を見つけることを大切にして事業を展開。小さなキャッシュカウを見つけるポイントは「やる人がいない、小さなマーケットでシェアがとれる、隠れたニーズがある」の3点で、理念と継続できるもうけが地域で共存できる事業を広げていくことが重要だとお話しいただいた。
②諸藤貴志氏「都市農地の有効的な活用方法」
諸藤氏は、九州大学卒業後、大手不動産会社に入社し、2011年アグリメディア設立。関東近郊の使われていない農地を有効活用する「シェア畑」を企画し、全国約80カ所にまで拡大させる。その他「農業体験」「人材」「流通」分野で新たな農業ビジネスを展開。「都市と農業をつなぐ」を事業コンセプトに様々な事業にチャレンジしている。今は成功している事業も、開始当初は1日に何か所も畑を訪ねて農家さんとお話しし生の情報を集めて回ったなどの苦労話に、参加者から様々な質問がとんだ。現在の事業スキームについても丁寧に解説いただいた。
③NPO法人里山プロジェクトみなみ 代表 多村淑子氏
稲城市に里山として豊かな自然を残す南山。同団体は、2008に年市民グループを立ち上げ、山林の手入れの手伝いを始めた。2011年山林の一部購入を機にNPO法人となり里山の保全活動を続けている。現在では、南山の畑で農業体験プログラムを開催したり、森の中でフェスティバルを行うなど、地域と連携しながら積極的に活動されている様子をご紹介いただいた。
●グループワーク(事業のテーマ決め)
各グループで事業プランのテーマ決めを行った。ゲストの皆さんが各グループを周りアドバイスを行うことで、テーマについて深めて議論を行うことができた。少人数のグループにしたことで、すべての参加者が自分事としてテーマ決めに積極的に参加した。
●発表&講評
3つのグループが事業テーマを発表し、ゲストとモデルエリア所有者である中村氏に講評を頂いた。事業テーマから具体的な事業プランにしていく過程の考え方のアドバイスや、資金調達の話、所有者としてのかかわり方を含めて検討してほしいなどの意見があった。講座終了後、グループごとに最終プレゼンテーションに向けた連絡体制や打合せ日程などが話し合われ、1週間後のプレゼンテーションに向けての意気込みが感じられた。
<3日目 : 9/8(土)9:45~14:30>
3日目はグループ発表の最終準備を行い、地域の方なども招いて3グループの事業プラン発表を行った。その後、モデルエリアでBBQを開催した。
●グループワーク(最終発表準備)
各グループ、開始前から集合し、作ってきたプレゼンテーション資料の確認を行っていた。すでにほとんどプレゼンが完成しているグループもあれば、各自が作成してきた担当部分を合わせて最終プレゼンに落とし込むグループなどそれぞれの作業を計画的に実施していた。講師にも積極的に質問し、最後までプランの精度を高めていた。
●最終発表(各10分発表 5分講評 質疑応答)
3日間の集大成として、各グループの事業プランの発表を行った。発表には、講師の他、地域住民や市役所職員も参加し、各グループの発表に対して質問するなど積極的に参加して頂いた。3日間の講座で参加者が工夫を重ねて作成した集大成の事業プランと、新しいアイデアの数々が披露された。
今回モデルエリアを提供いただいた中村氏からは、参加者への感謝と共に、「自分では価値だと感じていないことが、他の方にはお宝に見えることがあるのかと驚かされた、今後新しい取り組みを始めたい」との感想をいただいた。協力いただいた国分寺市の職員の皆様からも、今回国分寺市で開催で来てよかった、今後の業務にも活かしていきたいとの大変うれしい感想をいただいた。
(各グループ発表タイトル)
Aグループ:武蔵野の景色が日常~自分たちが景色になる~
Bグループ:みんなのキッチンガーデン
Cグループ:ことおや農園プロジェクト
●交流会
中村氏の畑横をお借りしてバーベキューを行った。3日間の講座を終えた参加者からは、3日間の内容の濃さと最終発表まで走り切った達成感の声が上がった。この講座をきっかけに初めて国分寺市を訪れた方もおり、国分寺の魅力を感じられる講座とだったとの感想をいただいた。畑と古民家の間で行うバーベキューの雰囲気に加え、清水農園さんと中村さんにご提供いただいた新鮮野菜で大いにもりあがった。参加者は、講座で学んだことを今後の事業にぜひ活かしていきたいと楽しそうに語られていた。最後に、中村氏への感謝をつづった寄せ書きをプレゼントした。