「テーマはまちなかの雑木林!みどりの市民活動現場視察&交流会」開催しました!

都市内の雑木林等での活動をテーマとし、保全管理の手法、樹木の萌芽更新や高齢化など、活動における新たな試みや課題について話し合うイベントを開催した。メイン事例として、協働型の雑木林保全モデルを掲げ「都立浅間山公園保全管理ガイドライン」を作成した「浅間山を考える会」(市民団体、大学、公園管理者、自治体による会議体)を取り上げ、活動現場の視察も行った。また都内各所で雑木林の保全に取り組む団体の活動紹介や、これからの保全・活用アイデアについてのディスカッションを行った。まちなかの緑の保全管理に取り組む市民団体、企業・事業者、自治体など47団体の幅広い参加者が集まり、互いの知見や交流を深める機会となった。

【実施概要】
・日 時:令和元年6月23日(日) 10:00~16:00 ※小雨決行
・会 場:都立浅間山公園、府中市生涯学習センター3階研修室
・主 催:特定非営利活動法人Green Connection TOKYO/
一般財団法人 セブン-イレブン記念財団 / 東京都
・後 援:府中市
・協 力:西武・武蔵野パートナーズ(都立浅間山公園指定管理者)
・参加費:1000円(昼食代含む)
・定 員:40名
・参加者:68名(一般参加者47名、ゲスト3名、発表者7名、スタッフ11名)
・参加団体数:47団体(活動紹介団体15団体、市民団体19団体、行政・管理者など5団体、教育機関など4団体、企業など4団体)

<スケジュール>
・都立浅間山公園あずまや前に集合
・都立浅間山公園現場視察
・府中市生涯学習センターへ移動
・浅間山を考える会の活動紹介
・昼食
・活動紹介&交流タイム
・助成金の紹介
・終了

<活動紹介団体>(15団体)
・浅間山を考える会(浅間山自然保護会、府中野鳥クラブ、浅間山ウォーキングクラブ、東京農工大学植生管理学研究室、東京都建設局西部公園緑地事務所、府中市生活環境部環境政策課、府中市都市整備部公園緑地課、西武・武蔵野パートナーズ)
・武蔵野の森を育てる会(武蔵野市)
・西原自然公園を育成する会(西東京市)
・福生萌芽会(福生市)
・エックス山等市民協議会(国分寺市)
・清瀬の自然を守る会(清瀬市)
・東久留米自然ふれあいボランティア(東久留米市)
・認定NPO法人FoE Japan宇津木の森(八王子市)

【参加団体】
●市民団体(19 団体)
小金井自然観察会(小金井市)/初台地区体育会(渋谷区)/緑ヶ丘仙川まちづくり協議会(調布市)/武蔵台緑地保全ボランティア(府中市)/府中市市民活動センタープラッツ(府中市)/南平丘陵公園雑木林を愛する会(日野市)/谷仲山緑地を守る会(日野市)/南丘雑木林を愛する会(日野市)/真堂が谷戸ホタルの会(日野市)/東大生態調和農学機構社会連携協議会(西東京市)/国分寺市にふるさとをつくる会(国分寺市)/下堰緑地の会(府中市)/ 22 世紀の森づくり・神代(調布市)/山逢の里(埼玉県秩父市)/ NPO法人 すぎなみ環境ネットワーク(杉並区)/多摩市グリーンボランティア連絡会(多摩市)/福生加美上水自然塾(福生市)/足立区緑の協力員(足立区)/ NPO法人 里山プロジェクトみなみ(稲城市)
●行政・管理者など(5 団体)
東京都環境局自然環境部/府中市公園緑地課/杉並区みどり公園課/練馬区土木部西部公園出張所/ NPO法人 フュージョン長池(八王子市)
●教育機関など(4 団体)
東京農工大学/学校法人自由学園/東京農工大学どんぐりの村/国立科学博物館附属自然教育園
●企業など(4 団体)
株式会社 地域環境計画/株式会社竹中工務店/企業と生物多様性イニシアチブ(JBIB)/一般社団法人いきもの共生事業推進協議会(ABINC)

【都立浅間山公園現場視察】
「都立浅間山公園 保全管理ガイドライン」を作成した「浅間山を考える会」の活動現場である都立浅間山公園の視察を行った。浅間山公園で活動をする様々な主体のうち、中核を担う団体によって1998年に結成された会議体である「浅間山を考える会」には、保全、活用、管理、専門家など、多様な立場の人が参加し、毎年4回開催する会の中で、保全方針や管理方法を検討している。
「浅間山を考える会」の構成団体であり、公園の管理を行っている西武・武蔵野パートナーズのパークレンジャー 金本敦志氏のガイドにより、浅間山公園の自然環境や、ガイドラインに基づく保全管理の成果を確認した。伐採を行ったエリアも見学し、新たに見られるようになった動植物の紹介等が行われた。公園の管理作業に関わっている「浅間山自然保護会」、「府中野鳥クラブ」のメンバーも参加し、参加者との積極的な情報交換が行われた。萌芽更新の成果に関心を持つ参加者が多数見られた。

【浅間山を考える会の活動紹介】
「都立浅間山公園 保全管理ガイドライン」を作成した「浅間山を考える会」の活動紹介として、西武・武蔵野パートナーズのパークレンジャー 金本敦志氏、東京農工大学 吉川正人准教授にお話いただいた。都立浅間山公園の自然や地形についてや、ガイドライン完成までの経緯についてお話いただいた後、ガイドラインの内容に沿って解説が行われた。最後には、浅間山の魅力を伝えるために開催しているイベント「キスゲフェスティバル」が紹介され、「浅間山自然保護会」の山田会長、「府中野鳥クラブ」の橋本会長にもご挨拶いただいた。

<お話いただいた内容>
・都立浅間山公園は、府中市の中でも緑の一大拠点として位置づけられている。東京都のマネジメントプランの中で、「東京の水と緑の骨格軸を形成する」「多様な生物の貴重な生息・生育空間となる都立公園」「それらを生かした体系や学びの場としての都立公園」の役割を求められている。
・2013年度に東京都が実施した調査によると、浅間山には1000種以上のいきものが生息している。植物は約500種。府中市内の植物が900種程度と言われているので、半分以上の植物が浅間山に生育していることになる。
・多摩川に削り残された独特の地形により、浅間山が唯一の自生地であるムサシノキスゲをはじめ、ここでしか確認できない動植物が多数いる。
・「浅間山を考える会」は20年以上前に結成された会議体。市民団体と東京農工大学、東京都、府中市、管理者によって構成されていて、会議を年に4回開催している。イベントの運営方法や、調査結果の共有、保全方針の話し合いなどを行ってきた。保全方針を議論する中で、統一目標が必要となり、ガイドラインの作成につながった。
・保全管理方針は主に3つ。1つ目は浅間山全体の生態系を考え、保全と回復を図ること。2つ目は地域の人々に魅力を伝えていく普及啓発。3つ目は市民協働で地域一体となって進めていくこと。
・ガイドラインに沿って順応的管理を継続して行ったところ、ムサシノキスゲは7290株から30580株、4.2倍にまで増えた。東京都レッドリストに掲載されている絶滅危惧種も92種類見つかっており、4倍近い面積の雑木林と水辺を併せ持った近くの公園と比べても遜色はないと言える。
・たくさんの地道な活動により、浅間山の自然の魅力が広まっている。この貴重な緑をぜひ地域の力で未来の子供たちに受け継いでいってもらいたいと考えている。

【活動紹介】
まちなかの雑木林で活動する7つの市民団体にそれぞれの活動内容をご紹介いただいた。

●武蔵野の森を育てる会(武蔵野市)
活動場所:境山野緑地(独歩の森) 面積:約1ha 開始時期:2005年~
武蔵野市内にはほとんど無くなった雑木林「境山野緑地」で活動する団体。境山野緑地の南側半分は「独歩の森」と呼ばれ、月2回の定例作業には、会員以外に大学と連携して多くの学生が参加している。今年2月に念願だった皆伐更新を、若い雑木林の区域で市の事業として実施。萌芽とともに、これまでに確認できなかった動植物が見られるようになってきた。

●西原自然公園を育成する会(西東京市)
活動場所:西原自然公園 面積:約2ha 開始時期:2000年~
市の公園で活動を続け、今年20年目となる。エリアごとに区切って皆伐を実施。萌芽率を調査し、試行錯誤しながら萌芽更新を行っている。皆伐したエリアの植物相が経年変化していく様子を東大農学部の学生が調査している。活動記録をまとめた冊子も作成した。今年の冬、2回目の皆伐更新を10aずつ順番に始める計画を立てている。

●福生萌芽会(福生市)
活動場所:文化の森 面積:約1ha 開始時期:2002年~
牛浜駅から歩いて5分、町の中の雑木林で保全活動を行っている。まだ萌芽更新という言葉が市民権を得ていなかった平成14年に市報の1面で「萌芽更新メンバー募集」を行ったところ19名が集まり、活動がスタートした。下草刈りなどの手入れをしながら萌芽更新について勉強を続け、結成2年後に大規模な伐採を実行。15年経った現在、立派な雑木林ができあがった。現在、2回目の萌芽更新を計画中。

●エックス山等市民協議会(国分寺市)
活動場所:エックス山 面積:約1.4ha 開始時期:2002年~
スーパーマーケットやマンションに取り囲まれた、町の中の雑木林で活動をしている。2009年に450㎡、2010年に約1000㎡を皆伐。去年の暮れから今年の初めにさらに約600㎡を皆伐。(1)昭和20~30年代の雑木林を想定した山の再生、(2)自然観察や憩うことのできる緑空間の再生、(3)生活と調和した都市の中の自然の再生、この3つのキーワードを整備方針に定めて活動している。

●清瀬の自然を守る会(清瀬市)
活動場所:清瀬市内にある3か所の保全地域(清瀬松山緑地保全地域、清瀬中里緑地保全地域、清瀬御殿山緑地保全地域)、清瀬市の市有林 面積:それぞれ 1~3ha程度 開始時期:1976年3月~
今年は44年目の活動。雑木林の管理作業等のボランティア作業や自然観察会や講演会の開催、環境保護パトロールなど多岐にわたって活動している。動植物を調査や東京都が募集したボランティアの指導など、200人以上の会員が得意分野に応じて活動している。

●東久留米自然ふれあいボランティア(東久留米市)
活動場所:東久留米市内にある7か所の保全地域、野火止用水歴史環境保全地域、東久留米市管理の森の広場、南沢樹林地、向山緑地、竹林公園 面積;それぞれ 1~3ha程度 開始時期:1997年12月~
地域の自治会の方たちと雑木林の管理を行ったり、里山の体験プログラムとして都内全域から集まった参加者に草刈りや木を切る体験をしてもらっている。保全地域では、気軽に参加できる仕組みとして「ちょこボラ参加者募集」を行っており、限られた時間でのお手伝いでも参加可能。8月にはシンポジウムの開催も予定している。

●認定NPO法人 FoE Japan宇津木の森(八王子市)
活動場所:宇津木緑地保全地域 面積:5haほど 開始時期:2002年~
気候変動や森林破壊、エネルギー問題など多くのことを扱う環境NGOの活動の中の一つとして、宇津木の森の保全活動を行っている。ほとんど薮に覆われた状態の森を切り開くところから始めて、活動開始後10年ほどかけてかつての所有者が利用していた植生を回復させていった。作業するだけではなく遊んでもらえる森にしたいという方針を話し合いの中で決定し、伐採で発生した材木を薪ストーブや炭焼きで活用したり、野草を食べるイベントを企画したり、様々な方法で雑木林を活用している。

【交流タイム】
テーブルごとにグループに分かれ、交流を兼ねたディスカッションを行った。各テーブルにスタッフも加わり、「まちなかの雑木林のこれからの保全、活用アイデアを出し合おう」というテーマで意見を出し合い、発表を行った。

■共有した活動アイディア(一部抜粋)
・活動で発生した間伐材の、利用法アイデアグランプリを開催する。間伐材を利用した積み木、木のおもちゃを販売する。子供向けイベントのゲームで活用する。
・はだしで遊べる道がもっとほしい。ターザンごっこをさせてあげたい。じゃぶじゃぶ入ることのできる池がほしい。
・若い人達にボランティアとして参加してほしいので、親子で何か体験のできる雑木林にしていく。
・土地の制約でチェーンソーを使えない場合や、使用するのが怖いという意見がある。チェーンソーを使い慣れていて、木を切ってくれるボランティアがいたらぜひ協力してほしい。
・雑木林から一つの市場が生まれるといい。活動資金を雑木林から生み出す仕組みを考えていきたい。
・雑木林活動のネットワークを作っていきたい。官民連携し、ボランティア団体同士の横のつながりも広げていく。
・自然を「採って育む」ことの素晴らしさを伝えていく。「伐採=自然破壊」の先入観をなくしていきたい。

【助成金の紹介】
セブン-イレブン記念財団小野弘人氏に、環境市民活動助成についてお話いただいた。助成金の概要や申請のポイントについて解説いただいた。熱心にメモをとる参加者の姿が多数見られた。

【アンケートより】
・現場を見て、保全管理ガイドラインの話を聞くことが出来て良かったです。
・産官学民の市民協働で、保全活動をしているということが素晴らしいと思いました。
・浅間山のガイドが聞けて良かった。浅間山からの国分寺崖線と府中の街、武蔵小金井駅、多磨霊園などの眺望がすばらしかった。
・浅間山公園は初めて訪れましたが、植生の豊かさにびっくりしました。自分たちの活動する南山もゾーニングをきちっとして、もっと適した環境づくりに力を入れたいと思い、とても参考になった現場視察でした。活動紹介の団体の活動の持続的で順応的な管理の仕方にも感心。勉強になりました。
・萌芽更新の例がたくさんあって驚きました。やはり里山は定期な伐採によって維持されているのだなと実感しました。
・萌芽更新の調査データはふだん見ることができないため、貴重で勉強になった。
・多様な人たちとつながったこと。雑木林をテーマにこのような交流会が開催されたことは、感動的でした。
・それぞれの団体がボランティアの方々と素晴らしい活動をしておられることに励まされました。
・都立公園とは違い、緑地保全地域のボランティアが、活発に活動されているのにはおどろきました。とくに若いボランティアがたくさん関わっていることがいいですね。
・各地の活動とそれを担う人々のことが知ることができて楽しかった。
・様々な団体の活動の内容を興味深く伺った。今後の活動のヒントも多くいただきよかった。
・たくさんの団体が頑張っておられる姿が見られて勉強になりました。
・浅間山を守るために沢山の団体の支援もあり、私たちの活動に外にも働きかけをしていきたいと思いました。
・ぜひ、雑木林活動のネットワークができて、定期的に集まったり、各地の活動をみんなで応援し、各自治体に雑木林の現代的意義を理解してもらえるようになるとよいですね。ぜひ、「雑木林ネットワーク」を作りましょう!
・来年以降も是非このようなイベントを行ってほしい。